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税理士法人アンシア春日部オフィス責任者
税理士 福山 裕司
東京国税局をはじめとする複数の税務署で徴収・法人課税・調査業務などに従事し、税務大学校や人事部での経験も積んだ税務のスペシャリストです。令和元年より税理士法人に参画し、現在は税理士法人アンシア春日部オフィスの責任者として活躍。思いやりと誠実さを大切にしながら、独創的な提案を通じて企業や個人の成長を支援します。NFL観戦や読書を趣味とし、日々自己研鑽に励んでいます。
税理士法人アンシア春日部オフィス責任者
税理士 福山 裕司
東京国税局をはじめとする複数の税務署で徴収・法人課税・調査業務などに従事し、税務大学校や人事部での経験も積んだ税務のスペシャリストです。令和元年より税理士法人に参画し、現在は税理士法人アンシア春日部オフィスの責任者として活躍。思いやりと誠実さを大切にしながら、独創的な提案を通じて企業や個人の成長を支援します。NFL観戦や読書を趣味とし、日々自己研鑽に励んでいます。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、その計算方法や適用される税率、さらに節税のために活用できる各種特例・控除制度について理解することは、トラブルを未然に防ぎ、適正な税務処理を行う上で非常に重要です。本記事では、譲渡所得の基本的な定義から、所有期間の区分、減価償却の影響、特例・控除の活用方法、そして注意すべきポイントまでを、詳しく解説します。
不動産売却時に得られる譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額
譲渡所得は、売却した年の1月1日時点での所有期間により以下のように分類されます。
所有期間が5年を超えている場合
※適用税率:所得税15.315%(復興特別所得税含む)+住民税5%=約20.315%
所有期間が5年以下の場合
※適用税率:所得税30.63%(復興特別所得税含む)+住民税9%=約39.63%
建物は時間の経過とともに価値が減少するため、建物は時間の経過とともに価値が減少するため、購入時の取得費から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
取得費の低下
たとえば、建物を2000万円で購入し、所有期間に応じた減価償却費相当額600万円取得費から控除します。
したがって、税務上の取得費は2000万円-600万円=1400万円となります。
譲渡益の増加
建物2,000万円で購入して、その建物を2,000万円で売却した場合、譲渡所得は売却価格-(取得費(減価償却相当額を控除)+譲渡費用)となります。
譲渡所得は2,000万円-1,400万円=600万円となり、この600万円に対して譲渡所得税が計算されます(譲渡費用があれば、それも控除します)。
ポイント
減価償却相当額を考慮していないと、売却時に予想外な税負担となるリスクがあるため、売却計画や節税対策の際には十分に考慮する必要があります。
不動産売却時には、税負担を軽減するための特例・控除制度が設けられています。相続や贈与で取得した不動産も、以下のような制度を利用できる場合があります。
自分が実際に居住していた家屋(およびその敷地)を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。これにより、たとえば譲渡益がそれほど大きくなく、控除分が譲渡所得を相殺する場合、税金がほぼゼロになるケースもあります。
取り壊し後の敷地売却
家屋と敷地の所有者が異なる場合
①住宅ローン控除との関係
居住用財産の3,000万円特別控除を適用した場合、住宅ローン控除が受けられない期間があります。
・新居に住み始めた年とその前2年以内に3,000万円特別控除を受けている場合
・新居に住み始めた年の翌年から3年以内に3,000万円特別控除を受けた場合
②特定の居住用財産の買換え特例との関係
居住用財産の3,000万円特別控除と特定の居住用財産の買換え特例買換え特例は併用することができません。
③マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例との関係
居住用財産の3,000万円特別控除とマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例は併用することができません。
④居住用財産の3,000万円特別控除の時期による制限
売却年の前年および前々年に3,000万円特別控除を利用していた場合は適用することができません。
譲渡所得の特別控除を受けるためには確定申告が必須
マイホームの場合、住宅ローンの残高が売却代金を上回ると、損失(オーバーローン状態)となり、通常は他の所得とは相殺できない譲渡損失が発生します。
その損失を給与所得や事業所得などと相殺でき、結果として納税額を軽減できる特例制度です。
不動産売却時の譲渡所得は、下記の計算式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額
ここで、譲渡所得がマイナスの場合は譲渡損失となります。
通常、譲渡損失は不動産同士の譲渡所得の相殺(損益通算)のみ可能で、他の所得(給与所得など)とは相殺できません。
一定の要件を満たせば、マイホームの譲渡損失について以下の特例制度が適用されます。
損益通算特例
売却した年に発生した譲渡損失を、給与所得など他の所得と相殺できる。
繰越控除特例
その年に相殺しきれなかった損失については、翌年以降最長3年間にわたり、繰り越して相殺(控除)することが可能。
損益通算・繰越控除で控除できるのは、譲渡損失の金額と「住宅ローン残高から売却対価を差し引いた額」のいずれか小さい金額となります。
譲渡損失の特例で損益通算できる金額は、次の2つのうち小さいほうです。
購入費用が6,000万円、売却代金が2,000万円、住宅ローン残高が3,000万円の場合
譲渡損失額=6,000万円-2,000万円=4,000万円
住宅ローン残高-売却代金=3,000万円-2,000万円=1,000万円
→ 損益通算できる金額は、1,000万円となります。
親族間取引の場合
売主と買主が親子、夫婦、生計を一にする親族などの場合は、特例の適用対象外となります。
前年や前々年に他の特例を適用している場合
他の居住用財産の特例(例えば、3,000万円特別控除や長期譲渡所得の軽減税率の特例)を受けている場合、特例が適用できないことがあります。
住宅ローン残高が要件を満たさない場合
売買契約日の前日に、返済期間10年以上の住宅ローン残高がない場合、特例は受けられません。
合計所得金額が3,000万円を超える年
その場合、繰越控除の適用ができません。
売却後に新たに住宅を購入する場合、譲渡所得税の納税を将来に繰り延べることができる制度です。
新居購入時の条件を満たせば、売却時に生じる譲渡所得税の一部または全部が、次回の売却時に課税されることになります。
具体例
この物件を将来8,000万円で売却すると
↓
実際の譲渡益1,000万円(8,000万円-7,000万円)ではなく
繰り延べられていた譲渡益4,000万円に新たな譲渡益1,000万円を加えた5,000万円が課税対象となります
不動産を長期間(所有期間が10年以上)保有して売却した場合、通常の長期譲渡所得税率(約20.315%)よりさらに軽減された税率が適用される制度です。
譲渡所得6,000万円以下の部分について税率が軽減されます。
譲渡所得6,000万円以下の部分
譲渡所得6,000万円超の部分
相続や遺贈で取得した居住用不動産が空き家となった場合、一定の要件の下で3,000万円まで控除できる特例があります。
相続や贈与で取得した不動産は、前の所有者の取得費を引き継ぐため、通常の取得費計算とは異なるルールが適用される場合があり、これにより譲渡所得が変わる可能性があります。
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