春日部の税理士が伝える「配当所得とは?計算方法から節税のポイントまで詳しく解説!」

税理士法人アンシア春日部オフィス責任者

税理士 福山 裕司

東京国税局をはじめとする複数の税務署で徴収・法人課税・調査業務などに従事し、税務大学校や人事部での経験も積んだ税務のスペシャリストです。令和元年より税理士法人に参画し、現在は税理士法人アンシア春日部オフィスの責任者として活躍。思いやりと誠実さを大切にしながら、独創的な提案を通じて企業や個人の成長を支援します。NFL観戦や読書を趣味とし、日々自己研鑽に励んでいます。

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目次

はじめに

「配当金は受け取るだけで終わりではない」ということをご存じでしょうか?株式や投資信託の配当金は、投資家にとって魅力的な収益源ですが、その一方で、税金の仕組みを正しく理解しておかなければ、手続きで損をしてしまう可能性もあります。

配当所得は、課税方法を選べるという特徴があります。総合課税を選べば配当控除で節税ができたり、申告不要制度を活用して手続きを簡略化したり、申告分離課税で売却損失と損益通算が可能になるなど、状況に応じた柔軟な対応が求められます。

この記事では、配当所得の基本から、具体的な課税方法の選び方や節税ポイントまでを詳しく解説します。「どうやったら税負担を軽くできるのか?」「自分に合った方法はどれなのか?」といった疑問を解消し、配当金をもっと効率的に活用するヒントをお届けします。

投資の収益を最大化するために必要な配当所得の知識を、ぜひこの機会に身につけましょう!

配当所得とは?

配当所得とは、株式や投資信託などを保有していることで得られる配当金や分配金を指します。企業が利益の一部を株主に還元する形で支払われる配当金や、投資信託の運用益を分配する分配金がこれに該当します。

配当所得は、投資のリターンとして得られるものですが、課税対象となり、所得税や住民税が課されます。そのため、配当金を受け取る際は、税金の仕組みを理解しておくことが重要です。


配当所得の具体例

株式の配当金

    • 上場企業や未上場企業の株式を保有していることで受け取れる配当金。

例)保有する株式1株につき50円の配当金が支払われる。

投資信託の分配金

    • 投資信託の運用益の一部を受け取る分配金。

例)運用益に基づいて毎月分配される普通分配金。

リート(不動産投資信託)の分配金

    • 不動産投資信託から得られる収益の分配金。

例)保有口数に応じた分配金を受け取る。

配当所得の課税方法

配当所得は、以下の3つの課税方法が適用されます。

総合課税

  • 他の所得(給与所得や事業所得など)と合算して課税されます。
  • 累進課税が適用され、所得が多いほど税率が高くなります
  • 配当控除を利用することで、所得税の一部を還付または住民税を軽減できます。

分離課税

  • 配当所得を他の所得と分けて申告し、一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税率で課税されます。
  • 配当控除は適用されません。

源泉徴収ありの特定口座で申告不要

  • 証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合、確定申告が不要です。
  • 配当金に対して証券会社が税金を源泉徴収するため、手続きが簡単です。

上場株式と非上場株式での配当所得の申告区分の違い

配当所得の申告区分は、保有している株式が上場株式非上場株式であるかによって異なります。それぞれの特徴と税務上の取り扱いについて解説します。

上場株式の配当所得

上場株式の配当所得は、次の3つの課税方法から選択可能です

  • 総合課税
  • 申告分離課税
  • 特定口座(源泉徴収あり)での申告不要

非上場株式の配当所得

非上場株式の配当所得は、原則として総合課税のみが適用されます
申告分離課税や特定口座の源泉徴収制度は利用できません。

総合課税のポイント

  • 配当控除が適用されます。
  • 累進課税が適用されるため、所得が多いほど税負担が増します。

配当控除の適用範囲

非上場株式の配当についても、配当控除の対象となります。ただし、配当控除の適用範囲や金額は、法人税法上の損金算入割合や所得税法の規定に基づきます。

上場株式と非上場株式の違いまとめ

項目 上場株式の配当所得 非上場株式の配当所得
課税方式 総合課税 / 申告分離課税 / 申告不要 総合課税のみ
配当控除の適用 総合課税の場合のみ適用 適用可能
申告不要の制度 特定口座(源泉徴収あり)で申告不要可能 不可
累進課税の適用 総合課税を選択した場合 適用
損益通算 申告分離課税を選択した場合のみ可能 不可

申告方法の選択基準

上場株式

総合課税が有利なケース

・所得が低く、配当控除による税負担軽減が期待できる場合。

申告分離課税が有利なケース

・他の所得が高額で累進課税の高税率が適用される場合。

・株式の売却損失と損益通算を行いたい場合。

申告不要が有利なケース

・配当金が少額で、手続きの簡略化を重視する場合。

非上場株式

  • 総合課税のみが適用されるため、配当控除を活用して税負担を軽減する方法が主な対策となります

投資信託の分配金の課税方法

投資信託の分配金は、種類によって以下のように課税区分が異なります。

普通分配金

  • 投資信託の運用利益から支払われる分配金です。
  • 配当所得として課税されます。

申告方法

上場株式の配当金と同様に、以下のいずれかを選択できます。

・総合課税

・申告分離課税

・特定口座(源泉徴収あり)での申告不要

元本払戻金(特別分配金)

  • 投資元本の一部が払い戻される形式の分配金です。
  • 元本の払い戻しに相当するため、課税されません

配当所得の申告不要制度について

配当所得の申告不要制度は、一定の条件を満たす場合に、配当金を受け取る際の税金を証券会社が源泉徴収し、納税が完了するために確定申告が不要となる仕組みです。この制度を利用することで、手続きが簡略化され、少額の配当所得がある人にとって便利です。

特定口座(源泉徴収あり)での申告不要制度

仕組み

特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、証券会社が配当金に対して20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)を源泉徴収します。この時点で納税が完了するため、確定申告を行う必要がありません

制度の適用条件

・配当金が特定口座(源泉徴収あり)で受け取られていること。

・上場株式やETF、REIT(不動産投資信託)などの配当金であること。

特徴

配当金が他の所得と合算されないため、総合課税の累進税率の影響を受けません

税率が一律20.315%のため、所得が高い人には有利

計算例

配当金:100万円

源泉徴収税額:100万円 × 20.315% = 203,150円

手取り配当金:100万円 – 203,150円 = 796,850円

少額配当の申告不要制度

非上場株式の配当金について、一定額以下であれば確定申告が不要となる制度です。ただし、この制度を利用する際は、いくつかの重要なポイントがあります。

制度の適用条件

 1回の配当金額が以下の計算式で算出される金額以下であること。

 基準額=10万円×配当計算期間(月数)12

特徴

申告不要を選択しても、支払い時に20.42%の税率で源泉徴収される

申告不要を選択すると配当控除が受けられなくなる。場合によっては、総合課税で申告した方が税負担が少なくなることもある。

配当控除とは?

企業からの配当金に対する二重課税を防ぐための制度です。企業がすでに法人税を支払った利益から配当金が支払われるため、個人の税負担を軽減する仕組みとして設けられています。

対象となる配当金

・日本企業からの配当金

・国内上場株式投資信託の分配金

適用できない配当金

・外国企業からの配当金

・特定の投資信託からの分配金

・確定申告不要制度を選択したもの

・申告分離課税制度を選択したもの

控除率について

課税所得が1,000万円以下の場合

  • 所得税:配当所得の10%
  • 住民税:配当所得の2.8%

課税所得が1,000万円超の場合(配当所得金額の控除後)

  • 所得税:配当所得の5%
  • 住民税:配当所得の1.4%

節税のポイント

課税方法を選択する

総合課税と申告分離課税、源泉徴収あり特定口座のいずれが有利かを比較しましょう

・総合課税が有利なケース 

課税所得695万円以下の場合

・申告分離課税が有利なケース

株式取引で損失が発生している場合。株式の譲渡損失と配当所得の損益通算が可能。損失の3年間繰越控除。

・源泉徴収ありが有利なケース

 配当所得が少額で、手続きを簡略化したい場合。

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